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太陽光の実力

あんまり神経質に考えず、相手が聞こうが聞くまいがおかまいなく、それからも随分ためらったそうだが、ある日、全員を集めて「私は職場をこうしたい」と所信表明をした。
Tとしては「空間に向かって言った」つもりで結果はどうでもよいと腹をくくっていたのだが、意外にも問題の彼が近づいてくれたのである。 「自分の意志で試験を受けなかったのだから、序列に差がつくことは割り切っていた。
なのにあんたが妙に遠慮がちなのでこっちもこだわってしまってね。 今日はさっばりしたよ」以後、Tのノイローゼは急速に軽くなった。
コミュニケーションである以上、相手が存在する。 だが、相手を過度に気にする人は、カラオケボックスでうたうのと同様、相手が聞こうが開くまいがおかまいなしに、言いたいことを言ってみるのも、自分を取り戻すひとつの方法だろう。
3言われたら、言い返す相手の言い分が不当であったり、間違っていたりする場合、その旨を告げ、きちんと言い返しているだろうか。 力関係が上の相手だと、言いづらく、我慢して自分が犠牲になるケースも珍しくない。

自分ではなく他の人がやったことについて、上司に叱られた。 叱った上司が、事実を把握していなかったのであるから、「わたしではありません。
それはAさんがやったことです」というように言い返せばよいのだが、Aさん(同僚・先輩)に対する配慮から、黙って叱られ役を引き受けてしまう人がいる。 叱られた内容、Aさんとの人間関係の度合い、上司およびAさんの性格などを検討した上で、出方を工夫する必要はある。
黙って自分が引き受けたりすると、その後にAであることが判明した場合は、「きみはなぜA君だと言わなかったんだ」と、かえって上司から文句を言われかねない。 「自分が間違って叱ったくせに、困ったものだ」内心で不服に思えば態度に出るから、上司との聞に溝をつくることになってまた、「わたしではありません。
Aさんです」とはっきり言えば、今度はAが叱られるわけだが、そうなると、「あいつ、おれのことを告げ口したな」とAから恨まれることになる。 黙っているのも言い返すのも、どちらもうまくないのでは進退きわまってしまう。
そこで、言い返してAであることを告げるとともに、すぐにAのもとに走り、次のようにきちんと説明する。 「実は、月例会議の資料の件について、課長に呼ばれて叱られました。
いずれわかることなので、Aさんのことを話しました。 悪いようには言ってありませんから、Aさんから一言課長に詫びておいてください」こうしておけば、言い返してもまず問題は起こらない。
上司の指示・提案に問題があって、反対意見を述べたい。 この場合、「言われたら言い返す」のに工夫のいるところだ。
無造作に言い返したりすれば、上司を怒らせてしまう。 組織で仕事をする者にとって、上司を怒らせるのは得策とは言えない。
その場は黙って従って、酒の席で言い返すのでは、「彼は飲まないとものが言えないのか」と、軽く見られ司令。 どのように言い返したらよいか。
ある会社に、真面目で仕事熱心な係長がいた。 単に熱心なだけでなく、仕事のできる、力のある係長だったが、上司の評価はいまひとつだった。
彼は、「ですけどさん」というあだ名をもらっていた。 上司から何か言われると、決まって「ですけど」と言い返すところからつけられた名前であった。

仕事ができるのに評価が比例しないのは、「ですけどさん」が原因していたのであった。 わたしがかつて勤務していた会社に、独り言を言うクセのある係長がいた。
一緒に仕事をしてわかったのは、この人の独り言はクセのように見えて、「言われたら言い返す」ための武器だったのである。 その課の課長は積極的な人だったが、時折、思いつきを口にして「そうだ。
こういう時期だからこそ、新しい拠点づくりが大切なのだ。 さっそくそのためのプランを立ててくれ」などと言いだす。
金がかかる拠点づくりなど、上層部がOKを出すわけがない。 係長自身、「いま、この時期にもっとやるべきことがある」と、反対意見なのである。
だからといって、「わたしは反対です。上もOKしないと思いますよ」では、上司のプライドを逆撫でし、「検討もしないうちから反対とは何事だ」と怒鳴られるに決まっている。 係長は、「そうですか」とイエスでもノーでもない受け方をして席に戻ると、しきりに首をひねりながら独り言を言い始める。
「いや、違う」「でも、なぜこの時期に」「やはり考え直したほうが・・・・・・」初めのうちは無視していた課長も、だんだん気になりだして、「きみ、どうかしたのかね」と声をかけてくる。 係長としては、この一言を待っていたのだ。
「実は課長、いろいろ考えてみたんですがね」こう前置きして、ゆっくり丁寧に、自分の意見を述べ始めるのである。 課長にしてみれば、インターバルが置かれているし、思わず独り言まで言うくらい部下が真剣に考えた末、「実は」と、意見を述べ始めるので、「検討もしないでノーとは」が言えなくなる。

いま思い返すと、独り言はなかなか巧妙な言い返し戦術だったことがわかる。 日本の社会はいまもって、「長いものには巻かれろ」「出る杭は打たれる」が残っている部分がある。
上の人に反対意見や断りを言うのは難しい。 ラク志向に流れるついに「どうせ言ってもムダ」と、あきらめに到着してしまう。
意見を述べる、主張する態度が姿を消すと、次第に考えるのが面倒になり、自分の考えが持てなくなってしまう。 五十二歳でなお若々しいある部長は、笑顔で次のように話してくれた。
「わたしは、サラリーマンのプロだと思っています。 どんなプロかと言えば、自分の意見を言いつつ、ラインに残り、いつも中心にいて仕事をしている点です。
我慢しつつならだれでもできます。 自分の意見を主張し、なお中心に残るのがプロです」これまで述べた方法に、あなたの経験と知恵を加えて、主張型コミュニケーションの実践に努めてほしい。
自分の意見を述べる。 こんな当り前なことが、ふだんの生活の中で十分に行われていない。
主張となると、「何もそこまで」と、一歩ひいてしまうほうが多数派だろう。 十分に言い尽くさないまま、「まあまあ」と、手を打ってしまう例もある。
したがって、心の中にすっきりしないモヤモヤをいつも抱えることになる。 欧米人の場合は「主張」は当然のことであって、毎日が自己主張のトレーニングの場になっている。

彼らにとって、思ったことを率直に述べるのは人間として誠実な態度であり、主張して相手と対決するのは、生きていく上で大切なことなのである。 I氏は『欧米・対決社会でのビジネス』(新潮社)の中で、欧米人の自己主張が、いかに日常的で身についたものであるかを、イギリスのヒ−スロー空港におけるある出来事を例にとって説明している。
その出来事を、縮めて紹介してみよう。 その日、空港の待合ロビ−は乗客でごった返していた。
I氏は、ジャン・ジャックという友人とカウンターでビ−ルを飲んでいた。 ジャックの左側に、日本人の中年男性がいましもビールを飲み終り、ジャックの後ろを通り抜けようとした。
瞬間、「ガチャン!」と大きな音がして、周囲の視線がいっせいに集まった。

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